春になった。南向きの飛行機に乗り母親、妻、娘を連れて家族旅行にでかけた。鹿児島空港に降りるとあいにくの雨空だったがそこは間違いなく南国の空気。それから一泊二日の楽しい時間だったが旅のことはまた書く事にしよう。

今回の旅は家族全員いっしょにレンタカーで移動だったが、家族が城山観光ホテルでお茶をしている間に単独行動で鹿児島市街の中心にほど近い照国神社前の、鹿児島のみならず間違いなく南九州一のテーラーメイフェア三洲堂テーラーのご主人、福留君を訪ねた。アポイント無しでで訪ねたがラッキーにも福留君に会う事が出来た。18年前ロロピアーナ社の招待で初めてイタリアに行った視察旅行で福留君と出会った。そのとき父親が少し前に亡くなり四十九日が終わったばかりの沈んだ心持ちで参加した。亡き父親は生前から僕がロロピアーナ社にイタリアに招待された事をことのほか喜び、自分がどうなってもその旅には行くようにと病院でよく言っていた。当時ぼくは36才でその旅のメンバーのなかではまだ若い方だった。いまでこそイタリア通と思われているが当時はイタリアの歴史、文化、言葉、またサルトリアの事情についてまったく無知だった。その旅は自分の無知に気付きそれからイタリア文化を学ぶためイタリア語を習い、クラシックスタイルを学ぶため毎年ピッティウォモに通う事になったきっかけになった、我が人生にとってエポックメイキング的出来事だった。約10日間の旅のあいだ約20人ほどのメンバーの中で福留君とは気が合って、仕事のこと、ファッションの事、将来の事などよく話し合ったのを思い出す。実のところいまでもテーラーの友達はあまり多くはないが福留君はおしゃれなうえ人柄もすばらしく仲良くさせていただいている。安藤忠雄設計のビル2階にあるメイフェア三洲堂テーラーは中に何人か高度な技術をもつ職人さんが働くハンドメイドの工房もあり本格的でかつサロンとしてもとても居心地のいい空間だ。若くて美人の奥様にもはじめて会う事もでき再会の時間はとても短く感じた。

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メイフェア三洲堂店内で福留君と。お互い、いい年をとりました。

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18年前ロロピアーナ社視察旅行での写真。ヴェネチアサンマルコ広場にて。かばんを前にしているのはセキュリティを気にしてのこと。