8月になってロロピアーナ社の素材、またエルメネジルドゼニア社、ドーメル社の素材も全部ではないがいくつか到着した。その中には反物で入荷した素材が含まれている。当店ではピッティウオモで見たスーツから今年の傾向を分析してこれは今年人気が集中しそうだと思われるいくつかの柄を一反まとめて買い付けしている。ちなみに一反のことを英語では「piece」といい一着ずつの切れのことを「cut」という。 一反はメーカーによって違うがは約50mだったり約75mだったりする。スーツは巾が150cmとしてだいたい3mあれば一着できるので50mならスーツ16着はできるということになる。メーカーにとってカットだとオーダーごとに手切りする手間もかかるし、一点でも航空便で日本まで送らなければならないし追加注文のことも考えると在庫リスクも発生する。一反仕入れるという事は当然スケールメリットもあるし在庫リストは店が負担するわけなのでコストはカットと比較すると格段に安くなる。バンチブックで選んでイタリア、イギリスまでお客様のオーダーごとにメーカーから仕入れる価格と比べるとは同じ素材なのにそれこそ比較できないほどリーズナブルとなる。そういうことを考え当店はシーズン10種類以上の素材を一反単位で仕入れている。服地メーカーの人に聞くとそうやって反を毎年買い付けているテーラーはすくないそうだ。そしてその入荷した素材を「スペシャルプライス」としてオーダーを承っている。それを心待ちにしていただいているお客様も増えて本当にありがたいことだとおもう。

今日は午前中から一反入った素材をそれこそねじりはちまきで検品しながらカット作業に入った。ロロピアーナ、エルメネジルドゼニア、ドーメル社はやはり世界最高の服地メーカーである。反で入荷した織物をそっとふれるともうっとりするほどの触り心地でこの反ですばらしいスーツが生まれると思うとわくわくする。巻いてある反は冬物で1m340gとすると50mで15kg以上ある。肩にかつぐと腰にぐっと負担が来るがこの作業は夏のこの時期の年中行事で、今年も良い素材が入った!仕事がんばろう!という気持ちになってくる。高価な紳士服地を贅沢に大きい羅紗ばさみでスッと切っていく。良い服地を切るとスパッとと切れ味もいいものだ。

秋冬素材のオーダーの季節が近づいてきました。8月後半には準備が整う予定です。準備ができましたらまたこのブログでお知らせいたします。楽しみにおまちくださいませ。 
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羅紗ばさみでスッと切っていく。
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 いい素材と触れるとわくわくしてくる。