秋の到来
10月もはや7日。まさしく秋で洋服屋なのに夏物を着ててはいかんなと感じて昨日から秋冬素材のスーツを着始めた。1m240g前後の平織りのウール素材でできた夏のスーツはクリーニング屋さんに持って行き、1m300gを越える暖かみのあるウール素材のスーツを夏物をかたずけたのでタンスの空いたすき間に入れる。3年前に仕立てたスーツだけに丁度いい感じに身体になじんでいるのが判る。新品の良さもあるが仕立ててしばらく時を経過して着慣れたスーツも悪くない。とはいえまだまだ昼の気温は高い。汗もかいて、夕方ゆっくりお風呂に浸かり汗をながした。今朝は空も曇って昨日よりは気温も低い。これなら秋冬物のスーツを着ていても心地いい。シャツはジャーミンストリートの本店で買ったターンブルアッサー。ネクタイは今年夏アンジェロフスコで買ったドット柄、靴は一張羅のエドワードグリーンのドーバー。
ただしまだ長靴下、ホーズは暑苦しく感じる。いまでこそ良いものが身につけられるようになったが35年前この仕事を始めた頃は着るものがなく、困って父の服や弟の靴をだまって借りて着ていたなあ。そんな思い出がふとよぎる。

到来物
きのう近所の方に長野県で穫れた籠に入ったおおぶりの立派な松茸を2本いただいた。最近はしあわせなことに到来物がつづいている。先週は北海道のマサミちゃんからたっぷり筋子が入った極上の鮭をいただいた。その鮭は海でとれ漁師さんがよりすぐったものできんぼしの弟に上手にさばいてもらい、ムニエルにして白ワインかカヴァとあわせて楽しんだ。筋子はほぐしイクラしょうゆ漬けを作った。ロシアを思い出しノンソルトのクラッカーにクリームチーズを塗りその上にイクラをのせるのが今年の当家流。これも白ワインをたのしめる。
さて松茸はどうやったら最高に旨く食べられるのか考えていた。焼き松茸も良いが、炙る火鉢ももういまは処分してしまいうちにはない。子供の頃、松茸は田中羅紗店を始めた祖父が火鉢に網を乗せ時間をかけて炙っていた。いいにおいが家中にひろがり今日は焼き松茸だ!とよろこぶが実はぬかよろこびで焼いた松茸は祖父がひとりで食べてしまう。50年前の我が家には民主主義は根付いていなかった。 フライもうまいがフライは何本も手に入れたときにつくるもの。今回は加賀山代温泉にいった際、農協の直売所「元気村」で新米を仕込んだので松茸ご飯と松茸の吸い物を母にこしらえてもらうことにした。通常炊き込みご飯は鶏やごぼうなど根菜類をいれてつくるが今回は極上の利尻昆布とカツオだしと松茸だけで炊いた。薄味で松茸の香りがひきたつような松茸ご飯はやはり旨く、家族全員大満足。だが
松茸ご飯と松茸の吸い物だけではちょっと枯れすぎて物足りないので、ぼくが一品、魯山人風すき焼きをつくることにした。魯山人風といっても北大路魯山人のレシピをそのまま忠実にするわけでなくヴァーミキュラ鍋を使い、ひとなべでつくり、陶器の皿にとりわけるのをそう呼ぶだけ。ただ良い酒やしょうゆは使うので魯山人先生のやりかたと全く違うわけではない。鍋を囲みちゃんとすき焼きをすると満足感はあるが、部屋中がすきやきの匂いでもくもくになってしまう。だがこれだと鍋の中で煮込むので匂いものこらない。また普通のすき焼きだとあんがい最初食べる牛肉には味が付いていない事がおおいがこれならほんのり牛肉にも味がしみる。いただいた方に感謝しながら秋の味を家族みんなで楽しんだ。