いつも変わらないように思えるメンズスーツにも年によってトレンドはかならずある。マイスターの親方直伝の伝統の技を守るのもテーラーの大事な使命だが、ファッションである以上毎年のトレンドをテーラーはちゃんと知らなくてはならない。わたしは出来る限り毎年2回イタリア・フィレンツェのピッティウォモに行きトレンドを調べ、そこで学んだ事を、生産現場に伝え、お客様がオーダーされる際のサイジング、服地選びに活かしている。

そんなトレンドへの取り組みの大事な一環として着用テストがある。織物メーカーがリリースした新しい素材を使いスーツにして着てみる。これは出来上がりの姿を見る事で縫製物性を知ることができるし、着ていて生じるシワの状態、それからの復元の状態を検証できる。またその際にサイジングを試してみる。いわゆる「攻めた」サイジングはどこまで許容できるのか。スリムなスタイルが望まれる今、その着心地を体感することで貴重な情報としてお客様へのアドバイスにフィードバックできる。

素材

摂氏30度を越えるなか着るスーツをテーマに今回 御幸毛織がリリースしたシャリック スーパーライトを選んだ、これを使ってわたし自身用にスーツを仕立ててみた。シャリック スーパーライトは1mあたり165g〜175gと日本最軽量のスーツ素材といっていい。イタリアメーカーは天然素材100%にこだわるがこれは強度を保つためウール79%ポリエステル21%となっている。ただ安易にポリエステルを使うのではなく糸の製造方法を研究して、手が触れる表面は羊毛部分が多くなっているのが高級メーカーの矜持。またWATER RESISTANTの加工が施されている。

仕様
ミユキシャリックは非常に薄いためメーカーとしては縫製を安定するように接着芯併用を推奨している。ただ当店としては本バス毛芯にこだわりたい。そこで縫製工場に接着芯を使わずいつも当店が使っている本バス毛芯仕様で縫製するようにお願いした。パンツについても裏が透ける恐れがあるため内部にすべて裏地をあしらう仕様が推奨されている。それでは涼しさを損なうのでパンツが透けても良いからとヒザ前の裏だけとした。このスーパーライトについてはいままでのシャリックよりも透けないように感じていたがそれは、糸の構造がZ撚りとZ撚りではなくZ撚りとS撚りとなっているため糸がふんわりしている。だから透けないかもしれない。

サイジング 
いままでは上着のサイズは48をベースに仕立てていたが炭水化物ダイエットもしているので46をベースとした。上着丈はやや短めの70.0、エリ巾はクラシックな味わいを付け加えるため9.0とした。パンツはひざ幅22 スソは18.5とした。いままで股下は73だったが今回はブレイクを少なめにするため1cm短く72に設定した。
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インプレッション
まず上の写真、本バス毛芯特有の胸の丸みが表現されている。このあたりは狙いどおりだった。シャリック特有のアダルトシニア的な雰囲気は全くなくて、十分クラシックな雰囲気を持っている。着心地として特筆すべきは手触りの柔らかさ。使用している原毛はスーパー100クラスらしいが、それよりかなり上の手触り。今日は摂氏32度越えだったが、こんな中、軽さはアドヴァンテージだと思う。通気性はまあまあ。裾巾18.5に連動して股下を1cm短くしたのは大正解だった。ブレイクがすくなくなってスッキリしたのは写真からもわかるはず。シャリックを仕立てる者を一番悩ませる「透け」の問題はこのスーパーライトについては同色系の裏地を使う程度であまり心配することはないということが判った。わざと派手なショーツをはいてみたがまったく表面からは見えない。ということで総裏のヒザあては不要。

 御幸毛織 シャリック スーパーライト オーダースーツ価格75000円(税込)

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御幸毛織 シャリック スーパーライトはこのバンチの中の10種類から選ぶことができる。