朝起きる。散歩やトレーニングを済ませ、顔を洗いヒゲを剃る。
店に出る前、最低でも一週間はあいだをあけたかどうか注意して紺にするかグレーにするかスーツを選ぶ。 スーツを選ぶと次にシャツ、ネクタイ、チーフ、ピンバッジ、時計を合わせる楽しい時間。さすがに洋服屋をやって長いので着る服には不自由しないのがいまさらながら嬉しいものだ。洋服屋になりたての23才の頃は着るスーツにも不自由した。ネクタイや靴はいつも同じで着たきり雀で半年もしないうちにすぐに傷んでダメになった日々をフラッシュバックで思い出すことがある。衣服足って礼節を知る今は本当に幸せ。
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店に出ると服地が並ぶ。ロロ・ピアーナ、エルメネジルド・ゼニア、ドーメル、ヴィターレ・バルベリス・カノニコ、ミユキ毛織、ドミンクス。どれをとってもすべて一流品ですべてお気に入りの服地。ぜんぶ自分用に仕立てても良いと思うほど。
洋服屋になりたての頃、店に並ぶのはそれまでやっていた羅紗店の売れ残りで妙に古臭い素材が多く気に入らないものがほとんどだった。仕立てても自分は着たくないとおもう素材が多かった記憶がある。だんだん年月を追うごとにいい取引先と付き合うことが出来ていい素材を仕入れることができるようになった。20数年前からはあこがれていたイタリアの現地法人と取引できるようになった。経験を積んでいい服地を選ぶ目利きにもなってきた。始めて35年経っていい服地ばかりの洋服屋になりました。いい服地に囲まれて仕事ができて幸せ。
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