仕事はいえ毎年イタリアに出張できるのは我が身の幸せ。フィレンツェ、サンタ・マリア・ノヴェッラ駅に電車で到着して駅の前のサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の壁の色を見るとまた今年も来たのかと感慨もわく。

イタリアでの最大の悦楽は極上の西洋絵画を間近にみること。日本にはすばらしい書画骨董はたくさんあるし素晴らしい木造建築も多い。しかしこと西洋美術についてはイタリアには頭抜けて大量の名品が存在する。ルネッサンスの天才、ミケランジェロ、ラファエロ、レオナルド・ダ・ビンチ、ボッティチェリを最初に知り、それからブロンジーノ、アンドレア・デル・サルト、ルカ・シニョレッリなどの巨匠を見つける。

そして殺人者であるにもかかわらずイタリアリラ紙幣のデザインにまでなった絵画の世界に革命を起こした偉大な画家カラヴァッジョ。題材は聖書の故事のシーンが多いがそれは依頼者の意向というだけ、登場者は全て市井に生きる人びと。それまでの図像を遥かに超え、瞬間の人の心の動きを光と影で表現する。ベラスケス、レンブラントなどの天才に大きな影響を与えた天才の中の天才。
イタリア出張の合間にカラヴァッジョのマスターピースが一番たくさんあるローマをはじめフィレンツェ、ミラノで見た。イタリアのみならずヨーロッパの美術館にも点在する。そんなカラヴァッジョを訪ねる旅が我が夫婦の巡礼となった。イタリアから比較的行きやすいパリのルーブル、ロンドンのナショナル・ギャラリーにある絵を観るのを手始めに、数年前の夏ロシア、サンクトペテルブルク、エルミタージュにヘルシンキから電車で行き「リュート弾きの少年」を見た。二年前はマルタ島の聖ヨハネ準司教座教会で聖ヨハネの斬首という凄惨な絵を見たがそれが実に静かな絵なのに驚いた。ナポリに3点別れて存在するカラバッジョを求めて雲助タクシーや治安の悪さに辟易し混沌の街を彷徨ったのも良い思い出。雑踏の中にぽつんと立つミゼリコルディア教会で見た大作「慈悲の七つの行い」は忘れられない一枚。
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2014年ナポリ ミゼリコルディア教会で。撮影ご法度なのが残念
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2014年ナポリ カポディモンテ キリストの笞打。肉体表現が凄い。拡大してみてください。

今年の1月、マドリードのプラド美術館で「ダヴィデとゴリアデ」、ティエッセンボルミネッサ美術館で「聖女カテリーナ」を枚見た。もう一枚王宮内に「サロメ」あるというので出かけたら行事により閉館とのことで、次の日に再び王宮へ。王宮の中を探し回ったがどこかに貸出中のようで観ること能わず。またマドリードにこなくてはいけないのかなとちょっとがっかりした気持ちでスペインを離れたのを覚えている。
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ティエッセンボルミネッサ美術館で「聖女カテリーナ」今年1月
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「ダヴィデとゴリアデ」プラド美術館。フラッシュなしで撮影してから撮影はだめだと気がついた。以前は良かったそうです。巡礼者なのでなんとかお慈悲でお赦しを願って一枚掲載。

けっこう網羅しているサイト

家に帰ってカラヴァッジョ巡礼の画像を探していたら実はこの絵はローマ、クイリナーレ宮殿の前を歩いていたら美術館で特別展をやっていてそこで1年前見ていたことが判明。そのときはカラヴァッジョ展だとおもって喜んで入場したら一点だけだったことにちょっと落胆もしたのでその絵の出自のことを忘れていた。その絵がスペイン・マドリード王宮の「サロメ」だった。

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サロメ 昨年夏ローマで。拡大するとかなり大きく原画の様子がリアルに分かるはず。

来週からのイタリア出張でも、急ぎ足でもいいから、イタリア国内のカラヴァッジョ巡礼を続けたい。美を巡る旅なら必ず洋服のセンスの向上にもつながると信じている。