一月も終わろうとしている今、ピッティイマジネウォモで感じたことひとつお話して今回のピッティ報告のシメといたします。

新春1月のフィレンツェはいつもはだいたい摂氏5度くらいですが今年は10度を越えコートのいらない暖かさ。帰りに立ち寄ったオーストリア、ウイーンなどこの時、街に雪が残りますがいつもの名古屋と変わらず。日本だけでなく世界的に暖冬であることをヨーロッパでも体感しました。やはり地球温暖化は否定できない気がします。
そんななかピッティウォモ会場内では今年のテーマは「サスティナブル」。つまり地球の持続可能な経済活動。ロハスな印象のアースカラーとか、ペットボトルから再生した繊維(ポリエステル!)の使用などがトレンドだとのこと。しかし私は会場内に、1000以上のブースが少しの差異があるだけの似たような大量の秋冬衣料で溢れる光景に「サスティナブル」をひとつの流行としてとらえる、正直ちょっと軽薄な「トレンドワード」ではないかという疑念が湧いてきました。
世界では陳列のためなのか、実際の必要な需要の10倍以上の衣服が作られているという説もあります。仮に10倍ということは1億着売るために9億着無駄にしているということです。定価で買った客がバカをみる毎シーズン繰り返されるバーゲン在庫処分のためにはやめることはできません。世界中の余った衣料を目方で安く買い叩いて売買するビジネスもなりたちます。表に見えませんが、廃棄処分の衣料も少なくはないはずです。すべて灰になるならまだ良いですが、石油由来のポリエステル素材の焼却は確実に大気を汚染します。
少々我田引水になるかもしれませんが、オーダーメイドの話をしますと、お客様のオーダーがあると必要な長さだけ10cm単位で服地をカットして洋服を仕立てます。無駄はほとんどありません。当店の場合は日本国内、九州の縫製工場にお願いして仕立てています。その縫製工場はオーダーがあった数量だけを生産しています。ひとりのテーラー、技術者に依存する丸縫いと言われるフルハンドメイドより、縫製工場で作るスーツは効率的でブレも少なく、美しく仕上がります。縫製工場はその地方の人々の雇用に貢献し、地域社会の活動にも広く参加しています。
さらに当店はシーズンのはじめにまとめた数量を毛織物会社から買付けて販売し、シーズンが終わるとほとんどすべて売り切り、バーゲンをする必要はありません。商品の過剰やロスで廃棄はゼロ。夫婦ふたりという最小ユニットで販売価格を抑えられるのでお客様の家計も節約できます。材料について考えるとウール、リネン、シルク、コットンなど自然からいただいた貴重な繊維資源を大切に使っています。表地は羊を育て、殺さず刈り取りその恵みをいただいています。裏地も石油製品のポリエステルは使いません。裏地は衣類として使用不能のコットンの実に生える産毛、コットンリンターを集めてキュプラ(ベンベルグ)の原料として使っています。
買っていただくお客様も、ご自分のサイズで仕立ててある洋服は使い捨てではなく「人生の相棒」として丁寧に着ていただいています。

オーダーメイド、テーラーなど時代遅れでこの時代よくやっているねというそしりをなんどかうけたこともあります。でもコストを下げるためアジアの開発途上国に縫製工場を求め、大量の衣料をつくるビジネスモデルに背を向け、一方、超有名テーラーが仕立てる一着50万以上もするスーツにも走らず、普通の人が普通に買えるいい服をひとりひとりの採寸をして日本国内の縫製工場で仕立ててきました。こういうのは案外「サスティナブル」じゃないのかなと思っています。やはり我田引水かもしれませんが。

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織物を巻くための「紙管」を捨てずに展示に使うブランドもありました。