今朝中スーパーカブで柳橋魚市場へ仕込み帰りの「大甚」のご主人を見かけた。「大甚」とは名古屋伏見、広小路交差点にある120年続く居酒屋の名店である。「大甚」ののれんをくぐるとお客でいっぱいだ。入り口近くにたつご主人が座る席を教えてくれる。
客は席に座ると酒を頼んだあと、大きな木のテーブルの所にいき小皿に盛られた一皿220円からのおかずを何皿か選ぶ。おかずは当然自家製。「大甚」はビールもあるが基本的に日本酒で日本酒に合うものが揃っている。酒は「賀茂鶴」と「菊正宗」そして冷蔵ケースにはお造り類や料理の仕方もオーダーできる魚や焼きとりなどもそろっている。
人気店だから席は空いている席にどんどんつめこまれる。最初は知らない人の隣で飲むのが居心地悪いがお酒がすすむにつれてそれがいい感じの空間に変わっていき隣合わせのひとと話し込んだりすることもある、もちろん一人で大甚ワールドを楽しむ客も多い。昨今は海老フライ、手羽先、てんむす、味噌カツなどエセ名古屋名物があふれているが、わたしは「大甚」の料理 「大甚」の空気こそが名古屋が誇る名物だと思う。
ここのご主人は前に書いた通り、毎朝柳橋魚市場にご自身で魚を選びに行きその日にいい魚を探す。そして午後4時すぎまで仕込みをして開店。ご主人は毎日のように店に来る常連にも初めて来た観光客にも分け隔てなく接する。一日に何百人客がきても極めて自然体。柔らかなお顔ですべてのお客様に接し繁盛店にありがちな上から目線ということはまったくない。そのあたりほんとうに尊敬してしまう。大きなシャネルのマークが付いた眼鏡をいつもはめていらっしゃる。初めて見た時奇異に感じたが何年も見ているともうシャネルの眼鏡をかけないご主人は想像ができないほど一体化している。おしゃれというのはアイデンティティ、まさにご主人のシャネルが「大甚」のアイデンティティにもなっている。 店を出る時お勘定はご主人自らお皿や酒瓶を数えおおきなそろばんで計算してくれる。
また来たい店、また飲みたい店。大甚のご主人いつまでもお元気でがんばって欲しいものだ。