火曜はスーツを着てネクタイを締めて東京出張。暑い日は続くと行ってもいつまでもカジュアルウェアでは洋服屋として気持ちに締まりが無くなる。とはいえスーツ姿となると室内や新幹線の中は涼しいが屋外の湿度と気温の中なら汗はとまらない。昨年ピッティウオモでほとんどのイタリア人がソックスをはいていないのに学んでアンクルソックスに革靴を履く。そうすると案外涼しいことが判った。ああ、今日はけっこう暖房が効いているなあ。そういって自分に言い聞かせ晩夏残暑の東京を歩いた。

この出張の目的は柴山登光先生を訪ね、今後の当店のパターンをどうブラッシュアップしてどう洗練向上させるかご相談にうかがうことである。柴山先生はテーラーの修行からこの道に入り、フルハンドメイド縫製の技術を習得されたのち工場縫製の現場を歩き、テーラー技術を工場縫製のラインに活かし、その後工場の指導、後進の育成に邁進されている。柴山登光先生はメンズモード界の重鎮の一人であり、世界モデリストNo.1の証「ミケランジェロ賞」も獲得した日本最高のモデリストで有名セレクトショップや有名縫製工場の技術顧問をされているが幸いご縁で当店が仕立てる洋服の型紙、パターンはすべて柴山登光先生が作成している。一般の方はほとんど縫製技術さえ良ければ良い服ができると考えているが実は縫製技術と同時に、いい型紙の設計が無ければ良い服を作るのは不可能だ。良い型紙の設計には縫製技術を知り、パーツを形づくる「線の意味」をすべて知った上でさらにモードに対する「センス」が必要となる。「クラシックスーツ」のデザインは「モード」と違い毎年ころころ変わらず普遍的不変的と認識されている。とはいえ全く変わらないかというとそうではなく5年7年スパンですこしずつ動いて行く。テイタリアでも英国でもテーラーは「ミドルオブザロード」を標榜しているものでドラスティックは変化はないが そのミドルオブザロードがちょっとずつ地殻変動していくというわけ。柴山先生は毎年ピッティウォモに通い、関係者とミーティングを重ねたりパヴィリオン、ブースに展開される次のシーズンに販売するスーツ、ジャケットを見てそこから近い将来の「クラシックスーツ」の完成を目指していらっしゃるわけだ。
今回はまずプロトタイプのモデルを柴山先生に設計いただき、その設計に基づき工場で試作品を仕立て、その出来上がりを検証した。具体的な点は多くノウハウが隠されているのでくわしくは言えないがとても\美しく仕上がっていた。この服を見ながら販売店、制作者、工場サイドから検討を加え、さらに数回にわたる試作を重ね実用に向かうこととなる。
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試作したスーツを解説する柴山先生
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美しい縫い目を描く試作品のラペルと上衿。
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試作品の着心地を確認する。わたしと尊敬する柴山登光先生

このあと東京タワーに近い赤羽橋にあるロロピアーナジャパンでミーティングと新しい素材のプレゼンを見て、そしてサンクトペテルブルグ旅行でお世話になったプロコエアサービスのタカシと会い、噂の「俺のイタリアン」で軽く食事、そしてタカシのいきつけの「隠れ家」でしたたか飲んでから東京を後にした。
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ロロピアーナでリリースされたカシミア&ビキューナのジャケット素材
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オーガニックコットン100%のデニムフラワー。味のある冬のコットンパンツになりそうだ。