ゴルフが好き。ただゴルフはプレイしている自分は楽しいが人のゴルフについてはあまり興味が無いとつねづね言ってきた。タイガーウッズであっても、石川遼であっても、宮里藍であっても。
昨日の朝、普段はあまり見ない母の部屋のテレビのスイッチを久しぶりにつけた。なんだ米のゴルフの中継やってんだ。あれ?松山英樹だぞ。月曜日になんでやってんだ?と思った。サドンデスだ!最終日トップタイだったんだ!松山はスプーンだといっている。ドライバーが折れたといっている。
ドライバーは折れることがある。わたしは2度経験がある。記憶があるのは使っていたミズノ300sを貞宝カントリークラブの5番のティー台でテイクバックしたときトップまでいかずに折れたこと。スイングを終了せずに気がついたのでトップでだらんとヘッドが垂れ下がっていた。そういうことがあるのだ。松山もそうだったかもしれない。
私が見始めたのはサドンデス、エクストラホールの18番のティーショットから。ひとホールだけのドラマ。偶然とはいえこれをリアルタイムの中継で見る事が出来たなんというラッキーなことか。
いつもの松山のルーティーンは良く知らないが、アドレスがちょっと長いと思った。ゆっくり大きくスイング。軸は動いていないがちょっとフィニッシュが外に出たようだった。案の定ボールは思い通りのドローを描かずにプッシュアウト気味に右のバンカーへ。いまの中継はすごい。上空から撮影してボールがバンカーに真っ逆さまに落ちて行く映像をとらえていた。
対する大陸系ゴルファー、ケビン・ナはドライバーを軽く振り抜いたが身体より手が勝っていたのかちょっとスイートスポットより先に当たったのか、ボールの出だしはファアウェイを目指したのだが途中で力が無くなって来たら左に弧を描き森の深い場所の小川に消えた。 一打のペナルティを払いケビン・ナは所定の位置でドロップしたが傾斜のためボールがホールにちかづく。そのため再度ドロップ、また近づく。ルールでは2回ドロップ失敗するとプレイスといって手で置く事が許される。これでボールがラフに深く沈む事なくいいライに置くことができる。幸運にもいいライをゲットできたケビン・ナはウッドでボールをグリーン手前まで運んだがすでに3打を費やした。
バンカーの松山は目標方向のすぐ左に木が立っている。ピンまでに空間はあるにはあるが目の前にバンカーのあごが1メートル以上。松山は5番アイアンを握った。ぼくなら間違いなくあごに当たる。もはや大選手の風格の松山はあたりまえのようにゆったりスイングしバンカーから高いショットを繰り出した。だがボールは無情にも左のバンカーの手前の傾斜に落ち、女性のギャラリーに当たり深いラフに止まった。
ケビン・ナはラフなれどいいライだったため220ヤードの距離をウッドでうまく打ちボールはラフだったが前はなだらかなスロープの花道が開けているところまで出した。そこからはさすがトッププロ、ウェッジをたくみに強くヒットし、ワンパットのところまで寄せて来た。松山はバンカーからすぐのピン。これはロブショットしかない。ゴルフをやった人はわかるがロブショットというのはおおきく振って高くぽーんと上げて飛さない難易度の高いショット。松山はアドレスをオープンにしそしてウェッジは思いっきり開いた。並のプロではこんなことできない。普通はダフってバンカーにいれるかトップしてはるか遠くにボールが消えるかそんな結末だ。過去最高のゴルフプレイヤーだけの称号「帝王」の名をほしいままにしたジャックニクラウスが現役のままスコットランドをイメージするゴルフコースミュアフィールドビレッジを設計し、メモリアルトーナメントを創設した。メジャーとほぼ同等の名誉を讃えられるその優勝を目前にし、最高難度のショットが残る。それを松山は3度のおおきな素振りをし完璧にピン近くに落としあたりまえのようにワンピンに寄せた。
しかしそこは下り。ケビン・ナはほぼ平らなライン。ワンストローク勝っているがもしぼくだったら負けているような気になるだろう。ただ松山は一切頭を動かさずパッティングしボールはあやつられたかのようにカップの中心に向かっていった。ボールがカップに消える50cm前に松山は勝利を悟った。ケビン・ナのパットをまたずに優勝。
簡単なショットはひとつもない、全部難しいショットを4つ打ちパーをもぎとった。まさにジャックニクラウスプレゼンツ、メモリアルトーナメントを勝つにふさわしいひとホール、ふさわしいパー、ふさわしい15分間だった。ホストだからスーツに黄色いネクタイ姿のジャックが松山のパーに満足げだったのがゴルフファンには一番うれしかったことかもしれない。