ゴールデンウイーク中はオーダーが初めての若い方が多くご来店された。そのみなさまが異口同音におっしゃるのは、ジャケット、スーツの素材を見ただけでは完成のイメージがつかみにくいということ。展示してあるこの素材で出来上がった服はありませんかと聞かれる方も多い。
サンプルを仕立てておけば完成イメージがわかりやすいのだが、たくさんある素材すべてサンプルを作るのはやはり無理というもの。その中でもサイズを計測するためのゲージサンプルをロロ・ピアーナやエルメネジルド・ゼニアなどのお客さまに人気のある素材で作ったり、スペシャルプライスでとりあげる素材についてはサンプルを作ったりしている。
今はコンピュータでなんでもできる時代。素材を入力するとスーツやジャケットが出来上がったイメージが生成されるアプリケーションが高性能の編み機で世界的に有名な島精機で開発されたと聞いたのでウェブで調べるとたぶんこのデザインシステムがそのようだ。ファッション業界のニーズに合った発明でプレゼンテーションには力を発揮するはず。ただ出力したものを見れば紙かディスプレイの上の2D画像。服が目の前に出現するわけではないのでこれで消費者のイメージが喚起されるかというと難しいかもしれない。
スーツ、ジャケット素材を手にして出来上がりを想像しながらオーダーするというのは、経験してみるとわかるが案外とても楽しいものだ。
素材から出来上がりをイメージするTIPS
1.色柄だけでなく「素材感」に注目。
ツルッとしている、ざっくりしている、厚みはどうかなど色合い、柄以上に出来上がりに影響するのは「素材感」。そこに注目するため素材を手で触ってみます。プロはまず手触りで判断します。
2.ツヤかマットかに注目。
穏やかなスーツならツヤのないマットな素材を。華やかなスーツがほしければツヤのあるものを選びましょう。
3.出来上がりは素材より1割シックになる。
素材が派手だと思ってもスーツにしてみれば案外まとまってシックになるもの。特にストライプなど伝統柄は意外なほど落ち着きます。
4.ディテールは凝り過ぎ注意。
オーダーだとなんでもできると思って、思いのたけをぶつけてたくさんディテールを盛るとヤリ過ぎ感がでて芸人さんの服みたいになります。ディテールは抑えめに。シンプルなデザインなら長く着ることができます。
バンチサンプルで見るとこういう素材が(2017カノニコ・ブークレ)
このようなシックなジャケットに仕上がってきます。