オーダーサロンタナカはスーツ、ジャケットを仕立てるときキュプラ100%の裏地だけを使っています。今日はキュプラについてお話しましょう。
ウール、綿は天然繊維です。それに対してポリエステル、ポリウレタン、ナイロンなどは石油などからの合成繊維と言われています。我々が使っているキュプラは一見ポリエステルなどの合成繊維と似ていますが天然由来繊維、もしくは再生繊維とも言われ、木材、パルプなどのセルロースを銅アンモニア法によって溶かし、ノズルから細く長い絹に似た繊維に生まれ変らせています。レーヨン (ビスコースレーヨン) に比べ、耐久力や耐摩耗性などに優れていて、天然素材であるため、土に埋めると短期で自然分解されます。

特に旭化成のベンベルグ(=キュプラの商品名)はコットンの実の産毛であるコットンリンターでできていると聞いていました。コットンリンターとは綿の種子に生えている短い繊維で、綿の実についている繊維のうち長い繊維「リント」を取り去ったとき、その根本に残って生えている短い繊維「リンター」のことをいいます。ある程度長さがある繊維は「糸」にすることができますが短い繊維は用途が極めて限られます。ただコットンと同じ組成なので溶かす材料のセルロースとして最適なのです。同じセルロースでも木材よりコットンリンターのほうが出来上がるキュプラが良質なのでしょう。昨日旭化成からコットンリンターの現物サンプルをいただきました。まさに天然物。これを見れば天然由来ということがはっきりわかります。

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綿花 ふわふわの白い部分を使います。
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ふわふわの白い部分を取り去ると毛に覆われた種子が現れる。

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種子の産毛を集めたのがコットンリンター。コットンと同じだが繊維長が短い。
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コットンリンターを銅アンモニア法で溶解して細いノズルから長繊維に再生したのがキュプラ。