テーラーに置いてある紳士服地の端っこには約1cmの巾の帯のような織り耳、英語だとWovenselvegeが付いている。もともと織物の端がほどけるのを防ぐためのものだったが、フィンテックスの販売元、ロンドンのペンドル&リベット社がここに名前を入れるのを考案したともイタリア、エルメネジルド・ゼニア社が考案したとも言われている。名前を入れるのはまずメンズのオーダー向けだけでレディース向きや既製品用には耳は入れない。ちなみに名前の入っていない耳を業界用語で坊主耳という。耳は織機にジャガード織りの耳を織る機械を追加して織物と同時に織り上げられる。
織り耳用のジャガード型紙 葛利毛織
ションヘル織機 葛利毛織
織り上がってくる織り耳 葛利毛織
織物工場内では多種多様な織物が織られているがテーラー用の紳士服地は高級羊毛を使い、打ち込み(目付)がしっかりした一番の高級素材で、工場内でもいちばん気を使っていい状態の織り機を使って織り上げ、フィニッシングの工程に回される。 工場の中でも高価な素材だということが織り耳で分かるのでリスペクトされて作られている。
メーカーも織りネームはブランディングに関わるので神経を使っている。
ロロ・ピアーナ社の場合を見ると、当店のようにロロ・ピアーナから正規現地法人のロロ・ピアーナジャパンを通して、テーラー用に織られた素材を買い付ける場合はグリーンの織りタグが一点に一枚ずつ付属し、そして織り耳はレッド&グリーンになる。服地卸問屋など別のチャネルを通す場合は黒い織りマークと織り耳はイエロー&ブラックとなる。
ロロ・ピアーナ社正規現地法人ロロ・ピアーナジャパンから買い付けた素材に付くテーラー向け服地にはグリーン&レッドの織り耳とグリーンタグ
ロロ・ピアーナ社のグリーン&レッドの織り耳とグリーンタグ。他の色の織り耳なら並行輸入か、服地卸問屋経由となる。
世界で最も高価なデニムの一つ、ロロ・ピアーナデニムフラワーはロロ・ピアーナ社内で織られている。コットンだからか織り耳がブルー&レッドになっている。タグはグリーン。
エルメネジルド・ゼニア社の場合、正規現地法人ゼニアジャパンを通してテーラー用素材を買うと赤い織りタグが付属して、織り耳は赤となる。別の販売チャネルを通す場合は青い織りタグと青い織り耳となることが多い。ただゼニア社の織り耳はクールエフェクトなどは青いなどロロ・ピアーナ社ほど色の管理は厳密ではないようだ。
エルメネジルド・ゼニア基本の赤い織り耳と赤いタグ
エルメネジルド・ゼニアの人気夏素材、クールエフェクトは赤タグに青耳となっている。
イタリア、トリヴェロエルメネジルド・ゼニアの本社工場にて。ゼニアのテーラー用服地ができる様子。